世界コンピュータ将棋選手権 大会ルール           2006年12月24日制定
                                 2007年12月19日改訂
                                 2008年11月23日改訂
                                 2009年12月20日改訂


第1章 総則

(定義)
第1条 本規程において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 一 CSA          コンピュータ将棋協会
 二 選手権        世界コンピュータ将棋選手権
 三 事務局        主催者が任命した選手権の運営担当者
 四 審判         主催者が任命した選手権審判
 五 対戦         選手権における個々の対局
 六 試合         選手権の各日における、その日の全対戦
 七 対戦サーバ      事務局が用意した、CSAサーバプロトコルver.1.1.2に基づくLAN対戦用サーバ
 八 参加プログラム    選手権に参加するプログラム
 九 指し手生成部     参加プログラムにおける、将棋のルールに則った指し手の生成を行う部分
 十 インタフェース部   参加プログラムにおける、指し手生成部を除いた部分。対戦サーバとの通信、盤面の表示、累積消費時間の表示等を行う
 十一 使用可能ライブラリ 「世界コンピュータ将棋選手権使用可能ライブラリ規程」によって認定された世界コンピュータ将棋選手権使用可能ライブラリ
 十二 定跡データ     指し手生成部のうち、将棋の局面、そこに至る手順、あるいはその一部と、次に指すべき手、指すべきではない手、それぞれの評価値、あるいはその一部とを記述した部分
 十三 思考部       指し手生成部のうち、使用可能ライブラリと定跡データを除いた部分。ただし、使用可能ライブラリを改造して用いる場合は、その改造した部分も含む
 十四 プログラム開発者  思考部に関連するコードの開発者
 十五 参加者       参加プログラムの代表者。プログラム開発者でなくとも良い
 十六 マシン       参加プログラムの使用するコンピュータ、及び周辺機器

(目的)
第2条 本規程は、選手権の参加資格、及び試合・対戦の進行方法について定めることを目的とする。


第2章 参加資格

(思考部)
第3条
1 参加プログラムは、思考部について、自力で十分な工夫を施したものに限る。
2 プログラム開発者は一つの参加プログラムにのみ参加することができる。

(使用可能ライブラリ)
第4条
1 参加プログラムは、使用可能ライブラリを使用することができる。
2 使用可能ライブラリは、改造して使うことができる。その場合も、その使用可能ライブラリを使用したこととなる。ただし、改造した使用可能ライブラリそのものは公開しなくて良い。

(必須機能)
第5条 参加プログラムは、次の各号に掲げる機能を持たなければならない。
 一 任意の局面・手番・残り時間からの将棋の対局の開始と継続。
 二 任意の時点での対局中断。
 三 対局中の現在局面の表示。テキストでも良い。
 四 第22条の規定による、1手毎の消費時間の計測、及び累計消費時間の画面への表示。
 五 1手毎の指し手と消費時間の記録。対局中断時も、そこまでのすべての指し手と消費時間を取り出せなければならない。
 六 CSAサーバプロトコルver.1.1.2に基づく、LANによる対局。
 七 相手の指し手の手入力による対局。

(推奨機能)
第6条 参加プログラムは、次の各号に掲げる機能を持つことが推奨される。
 一 千日手の検出。
 二 CSAの規定するRS-232Cプロトコルに基づく、RS-232Cを用いた対局。
 三 LAN、あるいはRS-232Cによる通信で送受信した文字列の必要に応じた表示。

(実行機種)
第7条 
1 参加プログラムは、マシンとして任意の台数・種類のコンピュータ、及び周辺機器を使用することができる。
2 マシンは、参加者の責任で用意するものとする。
3 マシンの使用電力は1000W以下でなければならない。
4 マシンの発生音は70dB以下でなければならない。
5 マシンは、参加者の責任で選手権の会場に持ち込み、設置するものとする。
6 マシンは、対戦開始準備完了後は、対戦を中断するとき、および手入力対戦時の相手の指し手の入力を除き、人間が介入することなく対戦を完了できなければならない。
7 第3項、第4項、第5項、第6項を満たすことが不可能な場合、参加者は、その旨を所定の期日までに事務局に申請しなければならない。


第3章 参加申込

(参加申込)
第8条
1 参加者は、主催者が指定した期間内に申込を完了しなければならない。
2 参加申込の際には、事務局が指定した申込用Webサイトにて、代表者名、及びプログラム開発者・開発予定者のすべての氏名を明記するものとする。
  代表者名、及びプログラム開発者・開発予定者全員の氏名は公表する。
3 参加者は、プログラム開発者・開発予定者全員に選手権参加についての承認を得ていなければならない。これに疑義がある場合は、主催者が個々のプログラム開発者に直接確認を取ることがある。
4 複数の参加プログラムのプログラム開発者・開発予定者名に同一の氏名がある場合には、主催者が調査を行う。それが同一人物と判明した場合には、主催者はその状況の解消を求める。
  これが受け入れられなかった場合は参加の差し止めを行う。
5 参加者は、主催者が指定した参加費を指定された期日までに支払うものとする。
6 参加者は、主催者が指定した参加プログラムに関する情報を指定された期日までに連絡するものとする。指定する情報は、使用予定プロセッサ、メモリ、使用するライブラリ等である。
7 参加者は、参加プログラムに関して、第3条第1項を満たすことをアピールする文書を指定された期日までに主催者に提出するものとする。
8 参加申込後に参加者が自らの都合により参加辞退、あるいは参加放棄した場合、参加費は返還されない。

(電力・騒音制限)
第9条 
1 複数のマシンを使用する場合、単体でもマシンの使用電力が1000Wを超える場合、あるいは発生音が70dBを超える場合は、参加者は、選手権開催年の3月31日までに事務局に申請するものとする。
2 主催者が、申請のあった参加プログラムの予定された会場での対局が選手権運営上困難であると判断した場合、対戦用サーバとLAN接続可能な別室での対局や、リモート参加を指示する。

(リモート参加)
第10条
1 次の各号に掲げるいずれかの場合には、指し手生成部を、選手権の会場外にある、対戦用サーバとのLAN接続が不可能なマシン(以下「リモートマシン」という)で実行することができる。
  これをリモート参加という。
 一 参加者が選手権の初日の前日までに事務局に申請し、主催者がやむを得ない事情があるとして認めた場合。
 二 主催者が前条第2項の規定により指示した場合。
2 リモート参加の場合、参加者は、リモートマシンとの指し手の送受信機能、および第5条に規定した機能を持つマシン(以下「会場用マシン」という)を、自らの責任で用意するものとする。
3 リモートマシンと会場用マシンとの間の指し手の送受信は、手動で行ってはならない。その送受信のための通信の接続・再接続は手動で行うことができる。
4 リモートマシンの思考記録(少なくともリモートマシン上での消費時間と生成された指し手)は、残しておかなければならない。

(代理マシン)
第11条
1 次の各号に掲げるいずれかの場合には、インタフェース部の一部または全部(以下「代理マシン」という)と、指し手生成部(以下「指し手生成マシン」という)との間の指し手の伝達を手動で行うことができる。
 一 参加者が選手権開催年の3月31日までに事務局に申請し、主催者が指し手生成マシンが特殊な機器であるためにやむを得ないとして認めた場合。
 二 試合当日に、第5条に定める機能が欠落し、それについて主催者がやむを得ない事情があるとして認めた場合。
2 第1項の場合、参加者は、代理マシンおよび指し手生成マシンを、自らの責任で選手権の会場に持ち込み、設置するものとする。

(参加プログラムの連続性)
第12条
1 参加者は、そのプログラムについて、プログラム開発者全員あるいはその一部が同じである過去の任意の選手権の参加プログラムの後継であると指定することができる。
2 参加者は、そのプログラムについて、プログラム開発者全員あるいはその一部が同じである過去の選手権の参加プログラムのいずれの後継でもないと指定することができる。
3 第1項および第2項の指定は、選手権開催年の3月31日までに事務局に申請するものとする。
4 過去の選手権のある参加プログラム、およびその後継である参加プログラムについては、一つの参加プログラムのみが後継となることができる。複数の参加者から後継であるとの申請があった場合、主催者が扱いを決定する。
5 参加者から第3項に定める申請がない場合は、主催者が、どの参加プログラムの後継とするか、又は初参加扱いとするかを決定する。この場合、原則として、参加プログラムの開発者が重なる直近の選手権の参加プログラムの後継とする。

(参加の可否の判定)
第13条
1 参加プログラムが第2章に定める参加資格を満たさない場合、および第3章に定める参加申込手続きを怠った場合、主催者は参加の差し止めを行う。
2 第1項の規定は、第8条第7項を怠った参加プログラムには適用されない。ただし、第17条第5項に定める通り予選通過資格を失う。
3 参加プログラムが参加資格を満たすかどうか微妙な場合、最終的な参加の可否は主催者が判定する。

(試合当日の確認)
第14条 
1 参加者は、選手権の1次予選・2次予選・決勝の各日において、その日の対戦に用いた全バージョンのプログラム開発者全員の氏名、及び用いた使用可能ライブラリ名を、その日の結果発表時までに、事務局の指示に従い、事務局に報告するものとする。
  プログラム開発者全員の氏名と用いられた使用可能ライブラリ名は公表する。
2 参加者は、選手権の1次予選・2次予選・決勝の各日において、その日の対戦に用いたマシンおよび全バージョンのプログラムに関する主催者が指定した情報を、その日の結果発表時までに、事務局の指示に従い、事務局に報告するものとする。
3 第1項および第2項に定める報告を怠った場合、主催者は以降の参加の差し止めや順位の取り消しを行う。
4 参加者は、プログラム開発者全員に選手権参加についての承認を得ていなければならない。
  これに疑義がある場合は、主催者が個々のプログラム開発者に直接確認を取ることがある。
5 複数の参加プログラムのプログラム開発者名に同一の氏名がある場合には、主催者が調査を行う。それが同一人物と判明した場合には、参加の差し止めや順位の取り消しを行う。

第4章 試合方式

(シード順)
第15条
1 参加プログラムのシード順は、上位より、次の各号に掲げる順で決定される。
 一 前回の決勝の順位
 二 前回の2次予選の順位(決勝進出者を除く)
 三 前回の1次予選の順位(2次予選進出者を除く)
 四 上の一~三に該当しないものは前々回順位
 五 上の一~四に該当しないものは前々々回順位。以下同様
 六 初参加プログラム(抽選順)
2 前項第六号の抽選は、1次予選当日の受付締切時刻直後、すなわちその日の参加プログラムが確定した直後に行う。

(シード)
第16条
1 選手権は1次予選・2次予選・決勝を行う。
2 参加プログラムのシード順に基づき、上位から順に3プログラムが「決勝シード」となり、決勝から参加となる。
  決勝シードを除いた上位から順に16プログラムが「2次予選シード」となり、2次予選から参加となる。
  それ以外の参加プログラムは、1次予選から参加となる。
3 決勝シード、及び2次予選シードは、選手権開催年の3月31日時点で、参加申込を受理され、かつ不参加(参加の辞退、あるいは主催者による参加の差し止めのことをいう。以下同じ。)となっていない参加プログラム(以下「参加予定プログラム」という)を対象に決定される。

(予選・決勝の方式)
第17条
1 1次予選は、決勝シードおよび2次予選シードを除く全参加プログラムにより、各7局の対戦を行う。
  その上位8プログラムが、1次予選を通過して2次予選に進出する。
2 2次予選は、2次予選シードおよび1次予選通過者の合計24プログラムにより、各9局の対戦を行う。
  その上位5プログラムが、2次予選を通過して決勝に進出する。
3 決勝は、決勝シードおよび2次予選通過者の合計8プログラムにより、各7局の対戦を行う。
4 参加プログラムが、プログラム開発者以外の者が開発者として含まれている使用可能ライブラリを使用している場合、その予選通過数が制限される。最大通過数は1次予選が4プログラム、2次予選が2プログラムである。それを超える場合は、その代わりに次点のプログラムが繰り上げ通過となる。
5 第8条第7項に定める、参加プログラムについてのアピール文書の提出がなされていないプログラムは、予選通過対象とはならず、次点のプログラムが繰り上げ通過となる。
6 1次予選・2次予選において、その日の結果発表時に主催者が通過プログラムに翌日の参加を確認する。参加辞退の場合、あるいは確認が取れない場合は、次点のプログラムが繰り上げ通過となる。
7 1次予選・2次予選においては、選手権の進行状況によって、総対戦数を減ずる場合がある。
8 選手権開催年の4月1日以降、1次予選の結果発表時までに2次予選シードが不参加となった場合、2次予選シードの繰上げは行わず、その分だけ2次予選進出数を増やす。
9 選手権開催年の4月1日以降、2次予選の結果発表時までに決勝シードが不参加となった場合、決勝シードの繰上げは行わず、その分だけ決勝進出数を増やす。
10 第1項、第2項、及び第3項の方式は、選手権開催年の3月31日時点での参加予定者数が28以上64以下の場合適用される。
  その時点での参加予定者数が27以下の場合は、1次予選は行わない。
  その時点での参加予定者数が65以上の場合、60を越える5チーム毎に、2次予選シードを1、1次予選から2次予選への進出数を1、それぞれ増やす。それ以降に参加予定者数が64以下となっても、これを減らすことはしない。
11 1次予選・2次予選において、その日の受付締切時刻までで確定した参加プログラムが奇数となった場合、主催者が任意のプログラム(以下「招待プログラム」という)を参加させる。
  招待プログラムは予選通過の対象とならず、次点の参加プログラムが繰り上げられる。

(遅刻・参加辞退等の取り扱い)
第18条
1 参加辞退の場合、決勝シード者は2次予選の試合結果発表時、2次予選シード者は1次予選の試合結果発表時、それ以外は1次予選の受付締切時刻までに事務局まで連絡しなければならない。
2 参加者が、その日の受付締切時刻までに受付を済ませられない場合、受付締切時刻までに事務局に遅刻の連絡をしなければならない。
3 1次予選・2次予選において、受付締切時刻までに受付を済ませず、事務局への参加辞退又は遅刻の連絡もない場合、参加放棄となり、その選手権のその日以降の対戦に参加することはできない。
4 決勝において、受付締切時刻までに受付をすませず、事務局への参加辞退又は遅刻の連絡がない場合、無断遅刻となる。この場合、受付を済ませて対局の準備ができた時点で、その日のそれ以降の対戦への参加は認められる。
5 参加放棄、参加辞退の連絡の遅延、及び無断遅刻に対しては、主催者が警告や次回以降の参加制限等の措置を取る。ただし、交通事故・急病等、主催者がやむを得ない事情と認める場合は、警告や参加制限の対象とはならない。
6 その日の最初の対戦が開始された後、参加者が事務局に申請し、主催者がやむを得ない事情があると認める場合は、途中で棄権することができる。その場合、その日のそれ以降の対戦は不戦敗となる。

(組合せ)
第19条
1 完全スイス式とは、次の各号に掲げる規則に基づく組合せ法のことをいう。
 一 各回毎に、その回の直前までの勝ち:1、引き分け:1/2、負け:0として成績によって組に分け、同成績の組で当てていく。
   1回戦の場合は全員同じ勝ち点とみなす。
 二 同成績の選手が奇数のときなど、同成績で当てられなかったプログラムがある場合、成績の近い組のプログラムと当てる。
 三 既に対戦しているプログラムとは当てない。
2 変形スイス式とは、完全スイス式において、その回の直前までの成績ではなく、2局前までの成績に基づく組合せ法のことをいう。
3 予選は、次の各号に掲げる方式で対戦の組合せを決定する。
 一 1回戦は、完全スイス式で決定する。
 二 2回戦は、1回戦で上位が勝ったと仮定した上で、完全スイス式で決定する。
 三 3回戦は、変形スイス式で決定する。
 四 4回戦以降は、完全スイス式で決定する。
4 予選の組合せ及び先後は、事務局が用意した組合せソフトを用いて決定する。
  組合せソフトで組合せが決定できない場合は、事務局が決定する。
5 決勝は総当り戦で行う。全対戦の対戦順、及び先後は、1回戦開始までに事務局が決定する。
  

(順位の決定)
第20条 順位は、引き分けを0.5勝0.5敗と換算した上で、次の各号に掲げる順に適用して決定する。
 一 勝数の多い者を上位とする。
 二 ソルコフ(すべての対戦相手の勝星の合計)の多い者を上位とする。
 三 SB(負かした相手の勝星の合計)の多い者を上位とする。
 四 ミディアム(負かした相手の勝星が最高と最低の2人を除いた相手の勝星の合計)の多いものを上位とする。
 五 第一号から第四号までで同順位の者の間で行われた対戦について、DB(勝ち数-負け数)の多い者を上位とする。
 六 シード順が上位の者を上位とする。


第5章 対戦方法

(対戦の方法)
第21条
1 対戦は、すべて平手戦とする。
2 対戦開始予定時刻は、事務局がその10分前までに決定し発表する。
3 対戦は、対戦サーバを介して行う。
4 対戦開始の合図は対戦サーバから送られる。対戦サーバが利用できない場合は、審判が合図するが、両対戦者合意の上でそれ以前に開始することもできる。
5 遅刻・不在・マシントラブル等により、対戦開始予定時刻からの対戦開始が不可能な場合、対戦開始までの時間は、対戦開始が不可能な方の持ち時間から差し引かれる。両者とも対戦開始が不可能な場合は、両者の持ち時間から差し引かれる。
6 対戦サーバが利用できない場合、CSAの規定するRS-232Cプロトコルに則ったRS-232Cによる通信や手入力で対戦を行う。
7 対戦開始後は、参加プログラムの指し手の決定に影響を与える行為を人間が行ってはならない。
8 次の各号に掲げる操作は、参加プログラムの代表者、あるいはプログラム開発者が行うものとする。ただし、対戦開始予定時刻までに参加者が事務局に申請し、主催者が認めた者(以下「代理人」という)が操作を行うこともできる。
 一 対戦直前の参加プログラムの起動、及び対戦サーバとの接続
 二 手入力による対戦における、相手の指し手の入力
 三 審判の指示による、参加プログラムの対戦の中断
 四 第10条に定める、会場用マシンとリモートマシンとの通信の接続・再接続
 五 第11条に定める、代理マシンと指し手生成マシンとの間の指し手の伝達
9 対戦開始後に不慮の事故等で対戦が中断した場合、審判が、中断局面あるいはその数手前の局面からの、RS-232Cによる通信や手入力での対戦再開を求めることがある。
10 ソース変更・再コンパイル・相手に合わせたパラメータ調整等は、対戦中は手動で行ってはならない。それ以外ならば、対戦と対戦の間であっても、任意に行うことができる。

(消費時間)
第22条
1 1手毎に、実際の消費時間を計測した上で秒未満を切り捨てたものを1手毎の消費時間とする。ただし、ある手の消費時間が1秒未満の場合、その手の消費時間は1秒とする。
  すなわち、計測された消費時間をx秒、このルール上の消費時間をs秒と表わすとき、x<2であれば、s=1とする。またnを2以上の自然数とするとき、n<=x<n+1であれば、s=nとする。
2 累積消費時間は、1手毎の消費時間を累積したものとする。
3 持ち時間は25分とする。すなわち、累積消費時間が25分以上となったら負けとなる。指した後、25分00秒なら、その手で相手が詰みでも負けとなる。
4 選手権の進行状況によって、持ち時間を減ずる場合がある。
5 LAN対戦の場合は、対戦サーバが、1手毎の消費時間を計測し、累積消費時間も管理する。
  対戦サーバが相手の指し手または対戦開始の文字列を送信し、それに対する指し手を受信するまでの時間が1手毎の消費時間となる。ネットワークによる遅延も消費時間に含まれる。
6 RS-232C対戦あるいは手入力対戦の場合は、それぞれの参加プログラムの計測時間を用いる。
  なお、RS-232C対戦の場合、相手からの送信に対して、500ms以内に受信し、消費時間の計測を始めなければならない。
7 RS-232C対戦あるいは手入力対戦の場合でリモート参加の場合、消費時間は会場マシンで計測する。すなわち、通信時間・通信が切断された場合の再接続時間も消費時間に含める。
8 RS-232C対戦あるいは手入力対戦の場合で代理マシンを使用する場合、消費時間は代理マシンで計測する。すなわち、指し手を代理マシンと指し手生成マシンとの間で手動で伝達する時間も消費時間に含める。
9 消費時間の計測や表示に不正があった場合、審判が扱いを決定する。

(入玉宣言法)
第23条
1 次の各号に掲げる条件がすべて成立する場合、勝ちを宣言できる(以下「入玉宣言」という)。
  1つでも条件を満たしていない場合、宣言した方が負けとなる。
一 宣言側の手番である。
二 宣言側の玉が敵陣三段目以内に入っている。
三 宣言側が、大駒5点小駒1点で計算して
・先手の場合28点以上の持点がある。
・後手の場合27点以上の持点がある。
・点数の対象となるのは、宣言側の持駒と敵陣三段目以内に存在する玉を除く宣言側の駒のみである。
 四 宣言側の敵陣三段目以内の駒は、玉を除いて10枚以上存在する。
 五 宣言側の玉に王手がかかっていない。
 六 宣言側の持ち時間が残っている。
2 入玉宣言は、プログラムが行い、画面上に明示した上で「%KACHI」のコマンドを送信する。

(勝敗の決定)
第24条 
1 勝敗は、次の各号に掲げる順で決定される。
 一 当該の対戦の参加プログラムの代表者、プログラム開発者、又は代理人による投了。なお、投了は、自分の手番時に、審判にその旨告げることによって行い、審判が受理したときに成立する。
 二 審判による判定。
 三 対戦サーバによる判定。
 四 手入力対戦における、参加プログラムによる投了。
2 勝敗が決定したら、すみやかに事務局に報告されなければならない。
3 事務局に報告された勝敗は、所定の場所に掲示される。勝敗は、それに基づく組合せの発表時、又はその日の試合結果発表時で確定する。それ以降は、報告された結果に誤りがあっても、訂正することはできない。

(審判による勝敗判定)
第25条
1 次の各号に掲げる場合、審判はそのプログラムの負けと判定する。ただし、同時に両者がこの条件を満たした場合はその限りではない。
 一 将棋のルールに則った指し手が存在しない局面になった場合。
 二 累積消費時間が指定された持ち時間に達した場合。
 三 ルール上指せない手を指した場合。
 四 相手が正当な入玉宣言を行った場合。
 五 正当でない入玉宣言を行った場合。
 六 LAN対戦において、CSAサーバプロトコルver.1.1.2に規定されない通信を行った場合。
 七 RS-232C対戦において、CSAの規定するRS-232Cプロトコルに規定されない通信を行った場合。
 八 5手目思考開始後、通信・OS等の原因の如何にかかわらず、プログラムの終了等により指し手の入出力が不可能となった場合。
   ただし、通信時に不正な文字列を受信し、それを画面に表示後、その表示を確認できる状態でプログラムが終了した場合はその限りではない。
 九 中断後、審判が指定した局面・手番・消費時間からの再開がスムーズにできない場合。
 十 本規程で禁止される行為を行ったと審判が判定した場合。
2 千日手は指し直さず、引き分けとする。
  ただし、連続王手の千日手(同一局面の最初と4回目の間の一方の指し手が王手のみだった場合)は、連続王手をかけていたほうが負けとなる。
  千日手の判定は、LAN対戦の場合対戦サーバが行う。それ以外の場合は、審判、又は当該の対戦の参加プログラムの代表者、プログラム開発者、若しくは代理人の申し出により、事務局が用意した千日手判定プログラムにより行う。
3 通信ケーブルや電源切断等の事故、あるいは対戦サーバの不具合により中断した場合は、審判が勝敗・引き分け・再戦・途中局面からの再開等の扱いを決定する。
4 選手権の進行上問題が生じた場合、対戦の途中であっても、審判が勝敗(引き分けを含む)を決定することがある。
5 その他、トラブルがあった場合は、審判が勝敗・引き分け・再戦・途中局面からの再開等の扱いを決定する。

(棋譜)
第26条
1 選手権の各対戦の棋譜は、主催者の判断で、自由に使用や公開ができるものとする。
2 RS-232Cによる通信あるいは手入力で対戦が行われた場合、その対戦の直後に棋譜ファイルをコピーし、事務局に提出する(3.5インチフロッピーかUSBフラッシュメモリを推奨する)。
3 第2項の棋譜ファイルの形式は、CSA標準棋譜形式でなければならない。
4 第2項の棋譜ファイルには、一手ごとの消費時間も記録する。


第6章 参加プログラム等の保存およびクレーム期間

(参加プログラム等の保存およびクレーム期間)
第27条
1 参加者は、選手権の対戦で用いた全てのバージョンの参加プログラムの実行ファイル、データなど、選手権の状況を再現できるもの(以下「選手権版プログラム」という)を、決勝終了の翌日から1年間保存しなければならない。
2 参加プログラムについて、本規程に定める参加資格を満たさないとのクレームがあった場合、主催者が設けた調査委員会で調査を行う。
3 調査委員会は、クレームが正当であると判断した場合、選手権版プログラムの提出を要求し、その調査を行う。
  また、リモート参加の場合は、リモートマシンの実物のチェックを要求することがある。
4 参加者が前項の要求に応じない場合、また、調査委員会が、調査の結果、本規程に定める参加資格を満たさないとの判断を示した場合、主催者は順位の剥奪や次回以降の参加制限等の措置を取る。
5 クレームの期限は決勝終了の翌日から6カ月とする。


付則

(施行期日)
第1条 本規程は、平成21年12月20日から施行する。

(正本)
第2条 本規程は日本語版と英語版を作成する。その解釈に疑義のある時は、日本語版を以て正本とする。